マリアはすでにその石に口づけていた

聖母の口づけを受けた石に関するヒエログノシス(聖なるもの、聖別された品物を他のものと区別する秘密の神秘的理解)の事例が観察された。例えば、ある日、脱魂状態にあった子供の一人が、聖母に口づけてもらうために小石の入った小さなカップを差し出したことがある。そのうちの一つを聖母に向かって掲げると、少女が「何? えっ、もうキスされてるの? ああ、これはアンドレのだ」と言うのがはっきり聞かれた。小石は取るに足らないもので、何の価値もないが、同じ石でも聖母の口づけによって区別され、貴重な宝物へと変わるのである。

『マリアは急いで山へ行った』 第1巻・第4章 77ページ